厳しい道を選んで見えた景色 ― イギリス・エディンバラ大学への進学

エディンバラの街(左)と、エディンバラ大学の写真(右)
今回は、イギリスのエディンバラ大学に進学しビジネスマネジメントを学んだ、現在24 歳の西川仁さん(熊本県出身)にお話を伺いました。留学を決意したきっかけから大学生活、就職活動まで、そのリアルな体験を語っていただきます。
以下、西川さんの経歴
| 2020年7月 | 高校卒業 |
| 2020年9月 | エディンバラ大学 入学 |
| 2024年7月 | エディンバラ大学 卒業 |
| 2025年4月 | 日本のエンタメ系スタートアップ企業勤務 |
海外大学進学を考えたきっかけを教えてください。
もともと家族から留学を勧められていたこともあり、どこかのタイミングで海外にいくだろうと考えていました。特に「英語はいつか必要になる」という意識があったので、思い切って海外大学で学んでみようと思ったんです。
日本の大学に進む選択肢もありましたが、進路を迷っていたときに部活の監督から「道が2 つあったら厳しいと思う方に行け。その方が大きく成長できる」とアドバイスを受けたことも大きなきっかけです。
また、安全な環境や魅力的な文化、そして憧れていたイギリス英語の発音、そうした条件がそろったことから、イギリスを選びました。

大学在学時の西川さん
留学準備はどのように進めましたか?
正直、イギリスに行く前の成績は学年の真ん中より少し下くらいで、英語も得意ではありませんでした。昔英会話を習っていたこともあってリスニングには自信がありましたが、スピーキングは苦手でした。中学生の卒業時には、英語検定3 級は持っていましたが周りと変わらない英語力だったと思います。
イギリスの高校に進学する前の数ヶ月間、実践的な英語を学べる塾に通って基礎を固めるなど必死に学び、しっかり準備をしました。イギリスの高校での4年間を経て、大学進学前の受験期にはIELTS6.5を獲得し、イギリスのエディンバラ大学に合格できました。
留学先の環境について教えてください。
大学はスコットランドの歴史ある街エディンバラにあります。「イギリスの京都」と呼ばれるような場所でした。
観光客も多く、街並みが美しい地域です。
地方都市での生活だったので、暮らす人の心も生活も豊かで、時間がゆっくり流れている感覚がありました。海外から来た留学生にも温かく声をかけてくれる人が多く、日本に居たら気づけなかったであろう、素敵な温かさを感じました。ただもちろん、治安は良い場所ばかりではなく、周囲に気をつけて歩かなければいけない場所もあります。そうした環境も含めて、日本との文化の違いを実感しましたね。
また、入学時期がコロナ禍に重なってしまったため、最初は日本からオンラインで授業を受ける時期もありましたが、2年目からは現地で本格的に生活が始まりました。学生寮のような形ではなく、アパートで暮らしていたので、現地の友達づくりには苦労しました。そんな中日本人の仲間が橋渡しをしてくれたり、部活やサークルを始めたこともあり、少しずつ交流の和が広がっていきました。
1日の過ごし方はどんな感じでしたか?
朝はジムに行き、授業を受け、午後は図書館やカフェで勉強。夜はサークルや部活、交流会に参加し、授業やサークルの活動など日々忙しく過ごしました。
大学の図書館は24 時間開いていたので、よく夜遅くまでこもって課題に取り組んでいました。周りの学生がとても努力家だったため、そのレベルに自分も必死でついていけるよう日々学び続けました。ただ、今考えると日々勉強に打ち込みすぎて、もっと学生時期特有のいろいろな経験をしておいてもよかったかなと思う自分もいます。
大変だったことは?
多様な文化背景を持つ学生が集まる中で、議論の輪に加わり自分の意見を主張することが難しかったです。日本人の中では英語が得意と言えるほど成長したとは思いましたが、第二言語であることに変わりはなく、どのように伝えればよいか悩むこともありました。
一方で、文化ごとに意見の出し方や議論の仕方が違うことを知れたのは大きな学びでした。相手を尊重することが良いとされている文化、違った角度から意見を言うことが良いとされている文化、自分の意見を主張することが良いとされている文化等、国によって異なるので、難しさも感じつつ、そこでどう自分の存在価値をアピールするのかという観点は学びになりました。
印象に残っている思い出はありますか?
レストランなどで、友人や現地の方たちと語り合うことや、同じ時間を共有することがとても楽しかったです。イギリスならではの文化に自然に溶け込めた瞬間でしたし、今でも当時の写真を見返して懐かしい気持ちになります。
もう一つは、Japan Society(Society=日本でいうサークル)、で会長を務めていたときの思い出です。新入生歓迎イベント、クリスマスパーティや日本語教室、など。その地域に住む日本人や日本に興味のある外国人が楽しめるようなイベントを企画しました。
自ら誰かのために動いたことで、徐々に、周囲の方からも声をかけてもらえるようになり、それによって様々なコミュニティの繋がりができました。
留学を通して一番成長したと感じることは?
新しいことに挑戦し、最後までやり切れたという事実が一つの成長の証だと思います。イギリスへの進学やサークルの代表を務めたことはもちろん、大学在学中に剣道を始めたことも大きな挑戦でした。
その大学在学中に始めた剣道ですが、最終的には団体戦で1位を取ることができました。それも留学中の成果の一つです。全体を通して言えるのは、「やると決めたら最後までやり切ることができた」ということで、海外という慣れない環境の中でも挑戦できたことが今の自分にも繋がっていると感じます。
卒業後の進路は?
サークルで日本人の就職活動をサポートしていたこともあり、自分でも一般的な就職活動を行いました。日本の就職活動は書類選考や数回の採用面接など、採用が決まるまでに時間がかかり、なかなか納得できる就職先が見つかりませんでした。
また、地方都市という事もあり、就職活動に関する情報集めには苦労をしました。「ボストンキャリアフォーラム」や「ロンドンキャリアフォーラム」という日本企業が集まるフェアの存在を知り、面接を申込み、内定を得ることができました。事前に企業研究を徹底的に行ったので、納得できる企業から採用してもらえて、努力した甲斐があったと感じていますし、様々な就職活動を経験できたのもよい思い出です。
現在は、日本のエンタメ系のスタートアップ企業で働いています。努力をし続ける企業風土がこれまでの自分の価値観にも合っているので、そんな環境に身を置くことができていて光栄に思っています。新しいことや困難にも向き合いながら日々を過ごせていて楽しいです。
留学費用について教えてください。
学費や生活費は、奨学金などは利用せず、主に家庭からの支援によってまかなっていました。両親は、将来の投資として考えてくれており、家族のサポートに助けられながらたくさんの貴重な経験ができたと感じています。
(参考)年間学費約550 万円、生活費月20~30 万円(賃貸光熱費、食費、娯楽など含め)
海外進学をするか迷っている方へのメッセージ
海外進学や留学で一番大切な“もちもの”は、英語力でも知識でもなく、愛嬌だと思います。
英語を現地の人のように話せない、知らないことが多いのが当たり前な環境の中だからこそ、周りの手助けが必要になってきます。そんなときに、素直で笑顔で一生懸命コミュニケーションを取ろうという姿勢があれば、たくさんの人が助けてくれると思います。今不安があっても、自信がなくても大丈夫。プライドを捨てて、失敗を恐れず挑戦すれば必ず良い経験になると思います。
海外進学にするか日本で進学にするか選択肢が二つある環境なのであれば、一歩踏み出してみることをおすすめします。もちろん経済的なハードルは高いですが、留学したいと悩んでいる以上はその費用を遥かに上回る経験を積むことができます。今あるチャンスが将来も保証されているとは限らないので、チャレンジができる環境にいることに感謝し、一歩前に踏み出す勇気を持って欲しいなと思います。
特にイギリス北部のスコットランドの首都エディンバラは日本人の数も比較的多くなく、勉強や趣味など自分の好きを追求する人たちが集まる場所だと感じています。自分自身が現地に溶け込めましたし、もう一度住みたいと思える素敵な国でとてもお勧めです。留学中何をしてみたいのかなど、興味本位で調べるところからで十分だと思います。大学のWeb ページやSNS 等を活用しながら、自分に合った留学先が見つかることを願っています。