大学進学の制度
アメリカ進学の流れ
世界に類を見ない柔軟性 編入、転校も一般的
アメリカには 4,000 校以上の大学、カレッジがあります。超難関のハーバード大学のようなトップ大学から、比較的入学しやすいコミュニティーカレッジまで、とにかく幅広いレベルの大学があり、学費も様々です。大学のレベル、学費、形態が多様なので、希望と条件に合う学校を探すことができます。また、アメリカの教育システムは世界に類を見ないほど柔軟性に富んでいます。他大学への編入、転校は一般的であり、途中で専攻を変えたり、仕事をしながらパートタイムで大学に通う学生もいます。日本をはじめ世界各国から多数の留学生を受け入れ、門戸が広いのも特徴です。
日本の高校卒業後のアメリカ留学
アメリカには日本のような入学試験はありません。高校の成績、エッセイ、課外活動、推薦状などにより総合的に判断され、加えて TOEFLⓇなどの英語力が必要となります。更に有名大学では、英語を母国語としない留学生にも SATⓇや ACTⓇテスト(p.11 参照)の成績を要求する場合があります。英語力が大学の入学条件を満たしていない場合は、パスウェイプログラムや条件付き入学の制度を利用して留学するケースも多く見られます。
アメリカの大学の種類
多様で柔軟な教育制度のアメリカでは、ハーバード大学のような名門校から、その地域納税者であれば入学できる学校まで、全て大学という名称で呼ばれています。しかし、教育内容や環境、教員の質などの点で大きく異なりますので、大学ごとの特徴を捉え、自分の目的や適性に合った大学を選ぶことが成功の第一歩となります。
4年制大学
州立、私立、単科大学があります。総合大学は博士課程までもつ大きな大学が多く、州立、私立それぞれに規模の異なる大学があります。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
州立大学 | ・豊富な専攻 ・設備などが充実 ・超有名校に並ぶトップスクールもある |
・授業は比較的大人数で行われる ・留学生へのサポートは少ない ・研究重視 ・地域の人と留学生とで学費に差がある |
私立大学 | ・少人数制が多い ・教授から直接、指導が受けられる ・留学生へのケアが充実 |
・学費が高い傾向にある ・入学基準が高め |
アイビーリーグ | ・世界中にネットワークがある ・充実したカリキュラム ・有名な教授から指導を受けられる可能性あり |
・学費が高い ・入学基準が非常に高い ・レベルが非常に高い |
ベラルアーツカレッジ | ・少人数制 ・留学生へのケアが充実 ・幅広い分野を勉強 ・卒業後有名大学院への進学率が高い ・教養を身に付けることができる |
・学費が高い傾向にある ・実践的(実務的)ではないことが多い ・東部の田舎に多い |
2年制大学
アメリカは大学間の編入・転校が盛んです。入学後も専攻を変更できることが多いのが特徴です。そのため、最終目的が「4 年制大学卒業」の学生でも、最初の 2 年間は学費がリーズナブルなコミュニティーカレッジや、サポートなどの環境が充実しているジュニアカレッジに進学して一般教養を学び、3 年生から 4 年制大学に編入することもできます。
メリット | デメリット | |
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ジュニアカレッジ (私立) |
・クラスが少人数制 ・4年制への編入を目指す学生が多い |
・学費はコミュニティーカレッジより高い ・入学基準が高め |
コミュニティーカレッジ (公立) |
・学費が安い ・英語力の入学基準が比較的緩やか ・大学編入コースあり ・職業専門コースあり |
・地元学生の平均年齢が高い ・部活動などは期待できない ・寮などの施設が充実していない |
オーストラリア進学の流れ
イギリス教育制度からの影響
オーストラリアには 37 校の国公立大学と 4 校の私立大学、海外大学の分校が 2 校があります。オーストラリアは移民が多く、多様な文化を経験することができます。また、政府は留学生の受け入れに積極的で、特にアジア圏からの留学生を多く受け入れています。少ない大学数ながら学術レベルの高い学校がそろっており、グループ 8 と呼ばれるトップ大学があります。オーストラリアの大学では、イギリスの大学同様に専門課程を勉強する場と認識されています。
日本の高校卒業後のオーストラリア留学
日本の高校生がオーストラリアの大学に入学する場合は、ファウンデーションコースや TAFE(公立専門学校)、あるいは専門学校で勉強してから 2 年生に編入することもできます。TAFE や専門学校からの編入は勉強する科目によっても進学先は異なります。ファウンデーションコースでは、専門課程の勉強とカレッジスキルの勉強をし、そこでの成績によって進学できるかが決まります。ファウンデーションコース、TAFE、専門学校への入学でも英語のハードルは高く、IELTS 5.5 程度必要です。大学に直接入学する場合は、日本で 1 年間以上の大学か専門学校に行っている、かつ IELTS 6.5 程度をもっている必要があります。もちろん、日本での成績も大きく左右してきます。
※TAFEから大学へ編入する場合、すべての単位が移行できるわけではありません。
カナダ進学の流れ
州によって異なる制度、非常に高い入学基準
カナダには学位を授与できる大学が約 90 校あり、学生への強力な支援体制、少人数制クラス、キャンパス共同体の硬い絆などが特徴として挙げられます。また、大学の種類は大きく分けて、1. 大学院博士課程のある大学、2. 大学院レベルの学部大学、3. 学部教育を重視する大学の 3 つのタイプに区別されます。また地方を中心に大学と短大の長所を合わせた学部プログラムや実践面を重視したプログラムを提供する学校が多いのも特徴の一つです。州によって規定が違いますが、基本的には高校在学中に大学で専攻する分野に関連した教科を学び、規定以上の成績を修めると大学へ出願できます。
日本の高校卒業後のカナダ留学
質の高い教育で定評のあるカナダですが、入学審査の基準が高いことでも有名です。審査には高校の成績と TOEFLⓇのスコアが大きく影響し、多くの大学が TOEFL iBTⓇ80以上を要求しています。また、高校の成績も 5 段階評価で平均 4.0 以上が目安と言われるほど難易度が高いのが現状です。そのため、高校卒業後直接 4 年制大学に入学するケースは非常に少なく、まずはカレッジや大学付属語学コースなどからの入学を目指すことが多いです。
マレーシア進学の流れ
海外大学との連携が強く、欧米より費用が安いのが魅力的
マレーシアの大学は国立・私立のほか、海外大学の分校があります。国立大学の学生のほとんどがマレー人で、授業はマレー語で行われます。そのため、留学生は私立大学に進学し、英語で授業を受けるケースが主になります。イギリス、オーストラリアの大学と提携し、提携先の大学学位を取得する「ツイニングプログラム」、マレーシアの大学と提携先大学の 2 つの学位が取得できる「ダブルディグリープログラム」など、海外大学との連携が強いプログラムが特徴的です。最終的に欧米の大学で学位を取得したい人が、最初の 1 ~ 2 年物価・学費の安いマレーシアの大学で学び、残りの期間を欧米の大学に編入することで、留学費用を大幅に節約することが可能です。また、マレーシアでは、大学や学部にもよりますが年間 2 ~ 3 回入学が可能なタイミングがあるのも大きな特徴の一つです。
日本の高校卒業後のマレーシア留学
かつてイギリス領であったマレーシアの教育制度はイギリスやオーストラリアと非常によく似ています。基本的に日本の高校を卒業した場合は、学部課程への入学資格を満たしているためファウンデーションコースの履修は不要です。ただし、一部大学・学部で 1 年間のファウンデーションコースの履修が義務付けられている場合もあります。入学時点で TOEFLⓇや IELTS の英語基準に達していない、あるいは入学前に行う英語テストに合格できない場合、大学に入学する前に「英語集中コース」を受講することになります。
イギリス進学の流れ
大学の就学期間は3年間
イギリスには大学が約 100 校あり、1 校を除いて全て公立です。日本と大きく違う点として、イギリスの大学は3 年間で一般教養課程がなく、専門課程から開始、じっくりと勉強することができます。イギリスの学生は 16歳までに GCSE という統一試験を受験し、A から G までのグレードによって評価されます。GCSE 受験後、さらにシックスフォームという 2 年間のコースで GCE‒Aレベル試験に備え勉強を続けます。GCE‒A レベル試験は大学進学のための統一試験です。その結果により、どの大学へ出願できるのかが決定します。
日本の高校卒業後のイギリス留学
日本人がイギリスの大学へ進学する条件は高校を卒業していることのほか、以下の 3 つのうちいずれかを満たしていなければなりません。1.ファウンデーションコースを受講2.日本の大学・短大を 1 年以上修了3. GCE‒A レベルを受験(有名校や医学・法学の専攻を希望する場合)ファウンデーションコースにも入学基準があり、英語力次第では直接ファウンデーションコースに入るのも難しいこともあります。その場合、語学学校からスタートし、英語力を身に付けてからファウンデーションコースに入学するのが一般的です。
ニュージーランド進学の流れ
留学生のサポートが確立されている国
ニュージーランドでは教育の質について、さまざまな団体や機関で評価・認定を行い、高い水準を維持しています。国立総合大学が8校しかなく、政府は「質を保つためにこれ以上数を増やさない」という方針を掲げています。一方でNZQA(New Zealand Qualifications Authority=ニュージーランド資格庁)が総合大学以外の工科大学やポリテクニック(公立専門学校)といった高等教育機関の品質保証を行っています。また「留学生の生活保障に関する服務規程」を設け、国が教育機関に対して留学生サポートを徹底させているので、安心して留学生活を送ることができます。
日本の高校卒業後のニュージーランド留学
ニュージーランドでは高校卒業時点で日本の大学の1年次に履修する教養課程を修了し、大学1年目から専門科目を勉強します。そのため、日本の高校生がニュージーランドの大学に進学する場合、イギリスやオーストラリアと同様にファウンデーションコースを受講するのが一般的です。ビジネスやホスピタリティなどの分野では、ポリテクニックや私立の専門学校で2年間のディプロマ課程を修了して大学の2年生に編入する方法もあります。大学に併設されたファウンデーションコースでは、その大学の専門分野に関連する科目や授業で必要とされる専門用語や基礎知識を学び、ここで基準の成績以上を修めると大学の正規学生として入学ができます。ポリテクニックや私立教育機関が行うファウンデーションコースもありますが、進学可能な大学が限定される場合もあるので、事前に調べるポイントとして押さえておきましょう。